■調査内容報告
1.車両
フランス各都市で運行されているBHNSでは、存在感があり、都市の軸・シンボルとなりえるデザイン性を有した車両が導入されている。また、自動格納式スロープ等を備えることでバリアフリーであるとともに、環境への配慮として電動車(EV)を用いている都市もあった。
①一般の路線バスとは一線を画すデザイン性を有する、シンボリックで存在感のあるバス車両
・基幹的な乗り物として“バス”と“トラム”の中間といった印象を受ける、存在感のあるデザインとなっている。
・各都市で特徴的なカラーリングを施すことで、来街者にも安心感を与えるデザインとなっている。
②バリアフリーに配慮した車両機能と、車両機能を活かすバス停の構造
・自動で展開・格納される車いすスロープを搭載した車両が導入されている。
③環境へ配慮した電気バスでの運行
・架線から電気を得るトロリーバスや、路線端部で急速充電することで運行する電気バスが導入されている。
2.運賃体系・運賃収受
フランス各都市では、運賃体系、料金プラン及び運賃収受方法の工夫により、「分かりやすさ」「お得さ」「速達性・定時性の確保」の面で徹底的に利便性が高められている。
①わかりやすい運賃体系
・BHNSとされているバス路線の多くは、均一運賃性を採用しており、非常にわかりやすく、かつ車内での料金収受がスムーズ。(過去には対距離性を採用していた場合でも、BHNSへの再編時に均一性に移行していること)
・大都市(パリなど)においても、距離帯運賃ではなく、地下鉄・バス共通のゾーン運賃となっており、運賃体系がわかりやすい。
②住民と来街者どちらにも使いやすい、きめ細かい運賃プラン
・運賃体系は、ほぼ均一運賃性であることに対し、運賃プランについては、例えば時間券、定期券、団体割引など、きめ細やかな設定がされており、住民にとってはお得に、来街者にとっては1日券でわかりやすく、使いやすいという状態が両立されている。
③徹底した速達性・定時性が確保できる運賃収受方法
・【バス車内】運転手の改札を不要とし、全扉の乗降を可能とする「信用乗車方式」(ただし定期的に検札を実施)を始め、キャッシュレス化(ICカード、クレジットカード)、均一運賃性の採用など、乗降の際の料金収受でのタイムロスが極力発生しないようになっている。
・【バス車外】駅や観光案内所だけでなく、主要なバス停において「券売機」が設置されており、運賃収受はなるべく車外の事前精算で行うようになっている。券売機からは一見紙のチケットが発行されるが、これにもICチップが埋め込まれている。
3.バス停
主要バス停の基本的な機能は、上屋、ベンチ、券売機及び発車案内表示機である。注目すべきは、バスを優先するバス停形状で、バスを正着させ、全ての人が乗降しやすい機能とするの工夫を当たり前とする考え方である。
また、都市や路線で統一されたデザインのバス停標柱、系統別カラーリング、情報案内を採用し、バス停及びバス路線の存在感を示している。
①バスの発着を優先し、バス停車・待合に必要な長さを確保
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バスが十分に停車できる長さが確保され、バス停上屋も車両長に応じた長いタイプが採用されている。
②バス乗降時間の短縮を意識した乗り降りのしやすさを高める工夫
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傾斜を施した縁石設置、車両でなくバス停側を車両に近づける発想、光学誘導システム採用など、バスの正着性を高める様々な工夫がなされ、実際に、十数㎝単位でバス停に接車する。その前提には運転手の高い技術と(プロ)意識を感じる。
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バス停の高さ・勾配などに加え、バス停アクセススロープ、車両自動スロープなど、あらゆる人が利用しやすいバリアフリー技術が採用されている。
③利用するために分かりやすいバス停
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遠方からでもバス停と識別できる視認性の高いバス停標柱で、系統No/色別に到着時刻(何分後着)の情報も案内されている。
4.情報案内
フランス各都市では、デザインの工夫やデジタル技術の活用等により、利用者にわかりやすい情報提供が行われている。また、バスに関する情報のみならず、バス停周辺のまちに関する情報提供が行われている。
①視認性の高いアイコンやカラーリング等による情報の標示
・バス停の位置や運行系統に関する情報を表すアイコンが高い位置に・大きく・シンプルに標示されている。
・バス停やバスマップにおいて、運行系統が一目でわかるようなカラーリングとなっている。
②デジタル技術を活用したバス運行情報の提供
・バス停には到着バス系統とバス停到着までの時間を表示したモニターが標示されている。
・アプリ等により、バスのリアルタイムな運行情報提供されている。
③バス停周辺のエリア・施設の情報の提供
・バス停において、バス停周辺のエリアの情報が立体的な地図で視覚的に標示されている。
・バス車内においても、モニターや路線図の中でバス停周辺の施設情報が提供されている。
5.走行空間
フランスのバスシステム(BHNS)は、高品質なサービスを提供するに十分な運行速度の確保や、レギュラリティ(乱れない運行/信頼性)を指標としている。そして、走行空間に関しても、これらを実現するために、適切な道路構造にシステムを組合せてインフラが機能するように工夫されている。
①バスの走行レーンであることを明示
・バス専用レーンの区間や一般車とバスが混在(中央走行/片寄せ方式)している区間などあるが、舗装の色を変えるなど目立たせて一般車のレーンとは違うことが明示されている。
・必ずしも全区間をバス専用レーンにする必要はなく、渋滞が多発する区間だけ専用レーンにすることでサービスの質は保つことは可能という考えに基づいている。
②信号協調によりバスの走行を優先
・交差点にバスが到着したタイミングでバス側の信号が青に、一般車側の信号が赤に切り替わる優先信号が導入されておりバスの走行性を高めている。
・バスのみが一方通行を逆走可能な道路もあり、そこでは専用信号にてスムーズな運行を実現している。
③バス停で停車中に後続車が追い抜き出来ない構造
・バス停にバスが停車している時に、後続車が追い抜き出来ないようにハード面での整備がされている。
・それにより、バスは発車時に後続車を気にすることなく、本線へ円滑に合流することが可能(レビュラリティを確保)。
6.サービスの連携
フランス各都市では、バス停を他の交通モードとの結節点として活用し、サイクル&ライドやパーク&ライドが可能なハード整備が進められており、利用促進を図る取組も行われている。
①郊外部等のバス停において駐車場や駐輪場等を整備
・パーク&ライド駐車場、サイクル&ライド駐輪場及びシェアサイクルポートがバス停に隣接して整備されている。
・パーク&ライドは、商業施設等の駐車場を活用したケースや保育所を併設する等、乗り換えだけではなく、経由地としてのポテンシャルを高めるケースもみられる。
②バスネットワークと一体化した情報提供
・パーク&ライド駐車場やシェアサイクルポート等が整備されているバス停が路線図で案内されている。
・バス車内においても、モニター等の系統図において、パーク&ライド駐車場やシェアサイクルポートが情報提供されている。
③利用者への料金負担の軽減を図る取組
・乗車券や定期券等の購入者は、駐車場や駐輪場が無料で利用できる等の取組が行われている。また、シェアサイクルを割引料金で利用できるケースもみられる。